派遣ビジネスは、ソフトウエア開発作業を成果で請け負うのではなく、一カ月いくらというように、技術者の時間を売る。派遣指向のソフトウエア会社にとって最大の関心事は、人月単価(技術者一人が一カ月働くときの単価)と、人の稼働率であって、稼ぎが減る開発プロセスの改善や、余計な金を使う技術教育は、できればやりたくない。特に品質は、技術者だけの問題と見なされ、経営者は関心を持たない。極端な話、派遣プログラマーが自分で埋め込んだバグ(ソフトウエアの瑕疵)の摘出に時間を掛ければ、会社の実入りは増える。
これを読んでどういったことか理解できた人は、人月という単位で人を売るようなビジネスに携わっている人、あるいは携わってきた人だろう。
信じられない話だが、生産性の低い会社の方が儲かるわけだ。
しかもそんな会社に作らせたら、品質も低いのが常である。
プログラマの能力に歴然とした差があるにも関わらず、経験年数といった尺度で一律に人月単価が決まるのも、業界の悪しき商習慣となっている。
優秀なプログラマが1日でできる仕事を、そうでないプログラマ任せると1週間かかるということもある。それほど個人差があることが無視されている。
しかも、優秀なプログラマの評価は低く、過酷な労働条件のわりに報酬は高くない。このままでは日本のソフトウェア産業の未来は暗い。
利益を上げている会社は、プログラマのモチベーションを高める仕組みを考えている。例えば、Google は好例だろう。これからは、プログラマの能力を高めることに投資し続けた会社しか生き残れない。なぜなら、同じ技術力、同じ品質であれば価格競争に巻き込まれ、いずれ利益は出なくなるからだ。
日本のソフトウエア産業が音を立てて崩れるまで、この業界構造は変わらないのだろうか。崩壊はすぐそこまで来ているような気がする。インターネット、オープンソース、チープ革命の波が、構造改革を起こしてくれることを期待している。